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大阪高等裁判所 昭和24年(を)3739号 判決

被告人

谷口ヤス子

主文

原判決を破棄する。

本件を京都地方裁判所園部支部に差し戻す。

理由

原判決はその第一事実において被告人が昭和二十四年二月二十七日沢田久野から借受け使用中の銘仙着物一点を同年五月頃着つぶして横領した旨判示し、これを横領罪に問擬しているけれども、これに対照する同年九月二十日附追起訴状第一事実及び罪名によれば、所論のように被告人が同年二月二十七日沢田久野方で返還の意思がないのに一寸貸してくれと同人を欺き、銘仙着物一点を提供させて騙取した旨記載し、これを詐欺罪として起訴したことが明らかである。

しかし裁判所が実体判決をするには訴因と罰条に拘束されるのであるから原審において審理の経過に鑑み詐欺罪ではなく横領罪を構成するものと認めるならば須らく訴因罰条の変更を命ずる(刑事訴訟法第三百十二条第二項参照)等の方法をとるべきであつて、裁判所としてはかかる手続をとることなくしてそのまま訴因を異にする別個の犯罪事実を認定し、かつ起訴罰条と異なる法条を適用し得ないものと解すべきであり、従つて原判決は訴訟手続に違背してなされたものというべく、論旨は理由がある。

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